上下水道事業コンセッション 世界の潮流は【再公営化】

浜松市では、2018年4月1日より下水処理施設のコンセッション方式での運営が開始されます。

対象となるのは南区にある最終下水処理施設「西遠浄化センター」と中継ポンプ2箇所。
これらの施設が民間企業によって運営されることになります。

コンセッション方式は自治体の施設や設備の運営権を民間事業者に売却し、民間による施設の効率的な運営を期待する方式のこと。

浜松の場合は20年間の運営権を獲得した浜松ウォーターシンフォニー株式会社が25億円を運営権対価として支払い、その間の運営を受け持つことになります。
ウォーターシンフォニーは浜松市の下水道料金の一部を事業収入として受け取り、運営コストを下げられればその分が同社の収益となる仕組み。

浜松市は今後20年間で87億円が削減できるとしています。

コンセッション方式は空港などですでに行われていますが、水道事業では浜松が日本初の導入となります。
今後は導入する自治体が増えるみこみで、大阪市や奈良市などでも計画が進んでいます。

が、水道事業に関する世界の潮流は「再公営化(再自治体事業化)」といっていい状況で、アメリカ・フランスでも再公営化する自治体が増えています。

上下水事業は再自治体事業化が世界の潮流

上の図は少し古いですが、2000年から2014年までに水道事業を再公営化した自治体の数を示した図です。

アメリカでは59、フランスでも49の自治体が水道事業を公営化していることが分かります。

フランスのパリも再公営化した自治体の一つです。パリでは1984年から「ヴェオリア」と「スエズ」と25年のリース契約を行ったところ、1985年から2009年のあいだに水道料金が265%上昇しました。

適正な運用がなされた結果として経費がかさんだならやむを得ないところですが、そうではなかった。

以下、Anti-Globalizationの引用

2002年にはパリ市が委託した監査で、リース
事業者の要求する料金が経済的に正当化できる
水準より25%から30%も高いことが明らかにな った。
2003年には国の監査機関により、
ネット ワークの維持費用として事業者が積み立てる金
グルノーブル (フランス)パリ (フランス) 額と
実際の作業費用との間に大きな開きがあり、
その幅が拡大していることが明らかになった。
この手法でコストが実態以上に膨らみ、
インフラの維持管理が遅延する結果になっていた。
さらに、 事業者の親会社が、
さまざまな「ノウハウ」料金を受け取っていた。
また業務と維持管理をグループ 内の子会社に
下請けすることで、親会社は追加利益を得ていたのである。

(略)

再公営化の初年度、新しい市の事業体であるパリ市水道局は
効率化で3,500万ユーロの節減に 成功し、
その結果、料金の8%引き下げが可能に なった。
それから今日まで、これだけの大都市に安全な飲み水を
供給するうえでの技術的困難が あったにもかかわらず、
パリの上下水道料金は フランスの平均を大きく下回る水準に
据え置か れている。

水道民営化 から再公営化された13の実例(10カ国) : Anti-Globalization

パリは氷山の一角で、営利企業によるさまざまな弊害が出ています。

インフラが整っていない国ほど営利企業が付け入る隙が多く、食い物にされていると思われがちですが、再公営化しているのは圧倒的に欧米の先進国が多くなっています。

その理由の一つは、民営化・経営売却の時期が早かったことにあります。
パリは25年という歳月の経験があったからこそ、契約を更新せず公営での運用を開始することになったという構図があります。

基礎自治体ばかりでなく、地域レベル(アルゼンチンのブエノスアイレスやサンタフェ州)や国家レベル(ウルグアイやマリ)での再公営化がなされているケースもあります。

浜松市も海外での失敗例は認識しており、下水処理コンセッションQ&Aでは海外の失敗にも言及しています。

Q17 外国では失敗して、再公営化しているって聞いたけど大丈夫ですか?

A 海外では、民間事業者による上下水道事業への参入によって、「料金が上がった」「漏水が増えた」といった声があり、再公営化された事例もあります。こうした海外の事例については、我が国の制度や施設整備状況等が異なるため、単純に当てはめることはできませんが、モニタリングにおける参考事例としていきたいと考えています。

そのほかのQ&A/浜松市(https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/suidow-s/gesui/seien_qa/qa_sonota.html#q17 リンク切れ)

残念ながら監視していくだけで、具体的な事例と対処については書かれていません。

民間による運営といっても、事業権を与えるコンセッションから完全民営化された事業体によるものまでさまざま。
公営化にしても株式取得で過半数を占めるというケースもあるため、こちらも多様。

浜松は市が料金を定めて徴収することで暴利をむさぼることができない仕組みにしているため、参考にならないのかもしれません。

ヨーロッパの趨勢は公共事業の再公営化

ヨーロッパで進む再公営化は水道に限りません。

電力も再公営化する自治体も散見されます。もっともラディカルな自由化を行ったイギリスでも、再生可能エネルギー事業は自治体が運営するケースが出ています。

民間に任せるよりも自治体自らが行うほうが安くすむケースも多々あるため、民間企業は必ずしも効率がいいとは限らないという認識も広まっています。

きちんと利益を出そうとすると割高になるのは当たり前のことで、それが正常なのかもしれません。

Can Cities and Citizens Reinvent Public Services?

Public Ownership Is Making a Comeback in the U.K. – Next City

 

コンセッション方式のデメリットや再公営化された事例を知りたいなら Concession や Privatize ではなく、 “Remunicipalization” で検索すると記事が大量に出てきます。

ヨーロッパで進む公共事業の公営化は、行き過ぎた資本の論理への懐疑だけが理由ではありません。

もう少し広い視点で、人間性の回復といった資本からの脱却といった潮流もあります。

アメリカのシリコンバレーでは仕事自体が減っていく数年先が見えているためか、同じような流れが生じているようにも見えます。

コンセッション方式とは?

日本の公共事業におけるコンセッション方式とは、公共施設(インフラ)の運営権を民間事業者に貸与することで、民間の効率的な運営を公共事業に活用する契約形態。

施設や土地の所有権は自治体が保有したまま、運営や施設の維持は運営権を獲得した民間事業者が行う。

自治体は事業者から支払われる運営権の対価を得ることができる上に、民間による効率的な施設運営が期待できる。

一方の事業者は、与えられた事業権の範囲内で自由に営業できるため、事業の効率化な運用や売上を増やす努力を通して利益を上げることができる。

期間と事業権の範囲は契約ごとに異なり、利用料徴収を直接行わない場合もある。

コンセッション方式の対象

コンセッション方式の対象となるのは利用料が徴収できる公共・公益的施設(インフラ)のみ。

  • 公共施設:道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等
  • 公益的施設:賃貸住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街等

(利用料金の発生しない無料施設は対象外)

民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)「公共施設等運営権」で規定

業務委託・民営化との違い

業務委託は特定の業務を外部の業者に委託する方式で、運営主体は自治体のままとなります。
予算や業務の割り振りも行政が行います。

民営化は事業だけでなく、資産も含めて譲渡され、運営主体は民間となります。
JRやNTTのように民営化後も法律でしばられることがありますが、独自の経営判断で業務を行います。
【資産や運営権に期間のしばりなし】

コンセッション方式は資産は自治体が保有したまま、施設運営権のみを民間に貸与します。
経営主体は民間となり人員や予算配分は自由に行なえる一方、自治体による規定にもとづいて契約されるため、制限をかけることができます。
【期間のしばりあり】

コンセッション完全民営化

1.資産保有

資産は公共が保有民間へ資産を譲渡し、民間が保有

2.公益性の確保

公共が必要だと判断する事項、例えば災害時対応や料金に関する事項を契約に定めて公益性を確保法令等による規制の他は、民間の判断に委ねられる

3.競争性の確保

一定期間毎に競争で事業者を選定特定の事業者が半永久的に行う

そのほかのQ&A/浜松市(https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/suidow-s/gesui/seien_qa/qa_sonota.html#q17 リンク切れ)

 

コンセッション方式を採用する理由

コンセッション方式は運営を民間事業者が行うことで、行政よりも効率的な運用が見込めます。

自治体のメリットとしては、資産は維持したまま民の効率的な運用が手に入り監視も行えることと、ある程度長い期限を設定するため、長期的な見通しを立てることができることがあります。

事業者のメリットは、一般的な業務委託よりも自由度が高く長期的な運用ができることや、運営権を担保に借り入れができるため資金調達が行いやすいといったことがあります。

浜松市の例

浜松市の下水施設は更新時期にかかっているため更新費用が必要になっています。

しかし人口減少が急激に進み、将来の需要が減ることが確定しています。
需要減により事業収入が減ることが予想できるため、できるだけ経費を削減して施設の更新費に充てたい。

そこで白羽の矢が立ったのが民間企業の力を活用するコンセッション方式でした。

経営判断を含めてまるごと委託できるため、市の負担が減ることにつながります。

水道事業コンセッション方式を検討している自治体

大阪府大阪市
早ければ2019年度からの事業開始に向け、2015年2月に「大阪市下水道事業経営形態見直し基本方針(案)」を策定し、2016年7月に受け皿会社である新会社「クリアウォーターOSAKA」を設立。

神奈川県三浦市
2019年4月の事業開始に向け、2016年12月にコンセッション事業方式検討のための審議会設置条例を可決。2017年3月頃に実施方針案等を公表予定。

高知県須崎市
2018年度の事業開始に向け、2016年度の内閣府の「上下水道コンセッション事業の促進に資する支援措置」にてデューディリジェンス(Due diligence/当然の努力)を実施。

山口県宇部市
早ければ2022年度の事業開始に向け、2016年度の内閣府の「上下水道コンセッション事業の促進に資する支援措置」にてデューディリジェンスを実施。

宮城県

2020年度の事業開始に向け、2016年度の内閣府の「上下水道コンセッション事業の促進に資する支援措置」にて導入可能性調査・デューディリジェンスを実施。

環境ビジネスオンライン

 他国の状況がそのまま当てはまるわけではないが

水道事業のあり方は国や自治体によって異なるため、海外の事例がそのまま日本に当てはまるわけではありません。

一口に水道事業再公営化といっても、民営化した企業を再公営化したところもあれば、委託事業の期限が切れて再契約をしなかったところもある。自治体から契約を打ち切ったために違約金が発生した自治体もあります。

再公営化に踏み切った理由も、経営が不透明であったり、サービスの質が低下した、設備の更新を怠ったなどさまざま。

そのため水道事業コンセッションがすべて間違いとは言い切れません。

たとえば浜松市では市が定めた下水道使用料を利用者から徴収し、そのうち27%(計画時)を事業者に配分するという方式を取ります。
このため事業者が勝手に値上げすることはできないため、利用者負担が増えることはありません。

また、事業権を設定した施設も浜松市の下水処理能力の半分のみ。
下水道そのものは浜松市が管理するなど、慎重な姿勢を取っています。

規定があるため、外資が入っていることはそれほど気にする必要はありません。

それなら安心できるのかというとそうでもなく、他の国でどのような失敗があったのか、日本ではそれらの失敗をいかに回避する策を取るのかといった説明は一切ありません。

つまりいいことしか書かれていない。

下水事業はいかにコストを減らすかで利益が決まるゼロサムゲーム。
空港事業と異なるのはプレミア価格が設定できず、事業規模を大きくすることもできないこと。

水道事業コンセッションを計画してる地域にお住まいの方は、上下水を問わず他国の失敗例を他山の石として少し考えたほうがいいかもしれませんよ。

参考

heretostay-jp.pdf

浜松市における 下水道事業へのコンセッション方式導入について

浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業/浜松市(リンク切れ:https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/suidow-s/gesui/seien/pfi.html)

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