【絶滅危惧種】うなぎがふるさと納税のお礼の品に並ぶ 保護でなく消費を促す行政に違和感

ふるさと納税のサイトで「うなぎ」と検索すると、あるサイトでは1,373件、別のサイトでは831件が表示されます。

うなぎは納税者からも人気があるので、納税額も増えてハッピー、といいたいところなのですが…問題がひとつ。

それはうなぎは絶滅の危機にあること。

うなぎをふるさと納税のお礼の品にするのは、消費を後押ししているようなものです。

持続可能な資源の活用をのために保護に回るはずの行政が、逆に消費を促すことに違和感があるので、その理由をまとめました。


うなぎの子ども、シラスウナギが記録的不漁という記事を1月中旬より目にするようになりました。

二週間ほどしても状況は変わらず、1月29日付の朝日新聞では、今期の漁獲高(水産庁では採捕量と表記)は前年の1.5%しかない深刻な状況であると報じています。

ニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」が、ほとんどとれない状況になっている。

宮崎県によると、今季最初の1カ月間の漁獲量は1・9キロで前年同期の1・5%。年が明けて多少上がってきているが、過去最低のペースという。

ベテラン漁師でも3時間で8匹… ウナギ稚魚どこも不漁:朝日新聞デジタル

もう少ししたら漁獲量が回復するかもしれないし、この不漁は今年一年だけのことかもしれません。
絶滅の危機とは無関係な現象の可能性もあるので、これをもって「ウナギが極端に減った」ということはできません。

しかしウナギは世界的に危機的状況にあり、ニホンウナギ・ヨーロッパウナギともに絶滅危惧種に分類されていることに変わりありません。


シラスウナギから出荷できる200gまで成長するには半年から1年半かかるため、これから採捕量(漁獲量)が増えても半年後の土用の丑の日に影響が出ることは必至。価格の高騰が予想されています。

「足りないならもっとたくさん養殖すればいいじゃない」と思うところですが、成魚 ⇒ たまご ⇒ 孵化 ⇒ シラスウナギ の部分が難しくコストが見合わないため、まだ実現していません。

ウナギの完全養殖
現在の養殖ウナギは、ウナギの幼魚であるシラスウナギを捕まえて、そこから成魚にまで育てて出荷されています。

卵から孵化させて成魚まで育てる完全養殖は、水産総合研究センターを始めとしていくつかの企業で成功しています。

しかしコストが高いために実用化はもう少し時間がかかるようです。2,3年を目処に実用化を目指しているとのこと。

ふるさと納税のお礼としてのウナギ

うなぎふるさと納税

ふるさと納税のサイトで『うなぎ』でお礼の品を検索すると、多いところでは1,000件以上の返礼品が表示されます。

ウナギの特産地やその周辺の自治体は、うなぎのかば焼きや白焼き、ひつまぶしといった商品を返礼の品として用意しています。

ふるさと納税の返礼品として地場産業の振興とPRのために「出品」しているのは、一般的な特産品とかわりません。

しかしうなぎは絶滅危惧種。
養殖に必要なシラスウナギの漁獲量も減少の一途をだどっており、価格も上昇傾向にあります。

環境省ではシラスウナギの池入れ量を割り当てるといった資源管理や、シラスの漁獲制限を厳しくするなど、種の保護への取り組みを行っています。

自治体でも意識は高まっており、静岡県では2017年にニホンウナギを絶滅危惧種に指定しています。

絶滅の危険を認めている静岡県ですが、一方で、浜名湖うなぎの刺身やうなぎのパックをふるさと納税の返礼の品に当てています。

静岡県のふるさと納税

静岡県ばかりでなく、浜松市や周辺の湖西市、磐田市、菊川市も名前を連ねます。

密漁や無報告の漁獲があいつぐシラスウナギ漁

シラスウナギ漁は採捕組合に加入していて許可を得た人だけが行なえます。
獲れたシラスウナギは集荷人のもとに集められ、養鰻組合、養殖業者へと運ばれるという流れ。

養殖業者はシラスウナギを仕入れて、出荷できるうなぎまで育てます。

シラスウナギの最大漁獲量は決められているため、シラスウナギがどれだけ獲れたか申告・集計されています。

そしてシラスウナギを養殖する量を池入れ量といい、2015年より業者ごとに最大量が割り当てられています。

本来ならば シラスウナギの漁獲量 = 池入れ量 となるはずなのですが…。
しかし実際には シラスウナギの漁獲量 < 池入れ量 というおかしな事態になりました。

原因は不正なルートでの流通しか考えられませんね。

国内で採捕されたシラスウナギについては、その半分程度、2015年漁期については6割以上が、密漁や無報告の漁獲です。密漁と無報告の漁獲は、どちらも法律に違反する行為です。

違法な漁獲と流通 |ウナギレポート

シラスウナギの漁獲量が池入れ量より数字が小さい理由は、「過少申告」や正規の流通ルートを経由しない「闇取り引き」「密漁」が考えられます。

2016年には、シラスウナギ漁監視の強化や罰則化が行われたので、ある程度改善しているかもしれません。

しかしいまだ疑わしい部分はあり、資源の管理ができていない可能性が高いと考えられています。


資源の保護と持続的活用を推進すべき自治体が、絶滅危惧種のうなぎを一般的な特産品と同列に並べている。

資源の管理もできているか疑わしい。

あまつさえ自分たちが絶滅危惧種に指定しているものの消費を推進するのはいかがなものでしょう。

行政は資源を保護する立場

2017年10月12日、静岡県は静岡県版レッドリストを改訂し、ニホンウナギが絶滅危惧種に追加されました。

あらたに追加された静岡県版レッドリストではニホンウナギはIB類(EN)に分類され、かねてより絶滅危惧種に指定されていた環境省と同じカテゴリーとなっています。

絶滅危惧Ⅰ類:絶滅の危機に瀕している種
ⅠA類(CR) :ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
ⅠB類(EN) :ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険

静岡県、環境省_レッドリストで同じランク

環境省も国際自然保護連合もニホンウナギをIB類(EN)としています。

環境省ではうなぎの持続的な利用のために、シラスウナギの漁獲の規制を強め、池入れ(シラスウナギの養殖)の量を事業者ごとに割当てるなどの対策を行っています。

国だけでなく民間にも危機感はあり、漁で穫れたウナギの成魚を海に返す「親うなぎ」の保護に事業者と自治体で取り組んでいる例もあります。

うなぎ保護の取り組みの例
浜名湖発親うなぎ放流連絡会

漁で穫れたウナギの成魚(親ウナギ)を買い上げ、海の沖で放流する事業。
親うなぎを少しでも海に返すことで、シラスウナギ資源の回復を目指しています。

予算はクラウドファンディングで募っています(期間限定)。

浜名湖発親うなぎ放流連絡会

絶滅危惧種のウナギ

うなぎは絶滅危惧Ⅰ類、絶滅の危機にある種に分類されています。
ⅠB類(EN)「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」という位置づけ。

下の表は静岡県のレッドリストのランクですが、環境省のものとほぼ同じで、上にいくほど絶滅の危機にさらされていることを表します。

  • 絶滅(EX) :本県では既に絶滅したと考えられる種
  • 野生絶滅(EW) :飼育・栽培下でのみ存続している種
  • 絶滅危惧Ⅰ類:絶滅の危機に瀕している種
    • ⅠA類(CR) :ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
    • ⅠB類(EN) :ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
    • 絶滅危惧Ⅱ類(VU) :絶滅の危機が増大している種
  • 準絶滅危惧(NT) :存続基盤が脆弱な種
  • 地域個体群(LP) :地域的に孤立している地域個体群で、絶滅のおそれが高いもの
  • 情報不足(DD) :評価するだけの情報が不足している

▼国際自然保護連合の画像のほうが分かりやすいかもしれません。

一番左の “Extinct” が絶滅。一番右の “Least Concern” は軽度懸念。
左に進むほどに種のリスクが高くなり、絶滅危惧種の次はEWの野生絶滅。人口の飼育下にしか種が存在しない状態となります。

 

うなぎはEN、危惧種の真ん中にあたります。

さらに危機が深刻になれば、ワシントン条約で貿易規制の対象となる可能性があります。
ワシントン条約には強制力はありませんが、日本は「種の保存法」があるため、うなぎが貿易規制対象となれば輸入は禁止されることになります。


ⅠB類(EN)に分類されているものには、他にムツゴロウやライチョウがあります。

魚類と哺乳類と鳥類、生息域や生態が異なるので基準は違いますが、ムツゴロウやライチョウに比べると、種の絶滅に瀕しているという危機感を今ひとつ感じませんね。

ヨーロッパウナギはより危機的状況

ヨーロッパウナギはさらに危機的状況にあり、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」ⅠA類(CR)に指定されています。

ワシントン条約に基づき2009年からは貿易規制の対象となっています。

役所が規制する権限をもつ理由と意義

種の保存や資源の持続的な活用は民間では難しいため、中立の立場である行政が規制をかけるしかありません。

お役所は規制が好きだ、手続きが煩雑だと言われますが、ある意味では仕方のないことであり、また合理的なことでもあります。

ウナギの絶滅を心配して生産を減らしたい、あるいは漁獲量を減らしたいと思う企業・漁業関係者がいたとしても、他の会社や他の人がその分を獲ってしまえば機会損失になります。

全体の利益を考えると全員で協力してシラスウナギの漁獲量を減らすほうがいいとは分っていても、他の人が協力しなければ自分だけが損をすることになります。
自分だけが獲る量を減らしても、資源の減り具合は変わらない。
いわゆる囚人のジレンマの状態になります。

それぞれに生活がかかっているのだから、個々で控えるというのも難しい。
だからこそ、利害関係にない行政が全体に制限をかける権限をもつことの意義があります。

地域の特産品をPRしたいのは分かるけれど

ウナギの保護対策はなされており、その上で流通は禁止されていません。
少なくとも国・行政は、完全な絶滅というレベルにあるとは考えていないということ。

禁止されていないのだから、食べたい!となれば賞味すればいい。
なんら後ろめたいことはありません。

一方のウナギ産業では、「うなぎ絶滅の危機」が知れ渡ることで食べ控えが生じたり、漁獲量の減少によるウナギの価格の高騰でウナギ離れにつながって消費が落ちることを懸念しているそうです。

地元産業と食文化が廃れる危惧から、行政としてはウナギ産業を振興したいのは自然なことです。

しかし先にも書いたように、資源の保護と持続的な利用を実現するために規制するのも行政の役割。
環境省も静岡県もニホンウナギをレッドブックに登録し、絶滅危惧種としています。

輸出入規制には至っていないことから考えても、危機的状況ではないのかもしれません。
完全養殖が実現するまでは十分もつと判断しているのかもしれません。

しかし、これまでのように民間の需要に任せておけば絶滅の危惧があるとして規制をかけているのも事実。
官である自治体が絶滅危惧種の消費を後押しする必要はないですよね。

民間の需要に任せて絶滅に向かうのなら市場の選択。それはそれでやむをえないことですが、絶滅危惧種としながらふるさと納税の品とするのは自家撞着ではないでしょうか。


2年後、3年後には商業ベースでの完全養殖が実用化がされるようですが、まだ不透明です。
完全養殖が実現しても、量産され普及するにはさらに数年かかることでしょう。

完全養殖が成功するまでは、ウナギという天然資源を細く長く使うことに力を入れるほうがいいのではないでしょうか。

参考 静岡県版レッドリスト静岡県

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