【絶滅の危機】うなぎを食べていい?控えたほうがいい?

絶滅の危機にあるとされるうなぎ。

2018年1月には養殖に用いられるシラスウナギ(うなぎの幼魚)の漁獲量(採捕量)が平年の1%と記録的な不漁となったことから、うなぎを食べるのは控えようという声が目立つようになりました。

とはいえ食べないほうがいいと思いつつも、食欲には抗えずつい食べてしまって罪悪感を抱く人もいるようです。

2010年~2013年の不漁を機に水産庁は資源管理のために厳しい規制をかけています。だから個人的には流通している分を食べて罪悪感を抱く必要はないと考えています。ニホンウナギをレッドリストに載せている静岡県ですら、ふるさと納税の返礼の品として用意しています。自治体が食べてくれと推奨しているのに、一般人が食べて罪悪感を抱く必要はありませんよ。

個人的にはシラスウナギ不漁の影響が出る夏の土用の丑の7月20日と8月1日には値上がり確定なので、今のうちに食べておくのも手だと思います。それでも罪悪感を抱いてしまう気持ちも分かるので、食べてもいい派と控えたほうがいいとする派の論拠を書き出してみました。

食べない方がいい、食べてもいいの根拠

食べてもいいんじゃない?派
  • 水産庁が管理をしているんだからいいでしょ
  • 一般に流通しているうちはまだ大丈夫
  • 2012~14年の不漁の後は回復しているのだから、18年のシラスウナギの不漁も一時的なものかもしれない
  • 日本で食べなくても中国や台湾で食べられるのだから変わらない
  • 原因が分からないのだから、うなぎを控えたからといって意味があるとは限らない

現在適切な資源管理がなされているという考えなら、そこまで目くじらを立てる必要はないと考えられます。うなぎで生計を立てている人たちのことも考慮すれば、控えすぎるのも問題があります。

控えたほうがいいよ派
  • 密漁・密売が横行している現状では、管理できている状態からはほど遠い(養殖に用いられるシラスウナギの量より、申告されるシラスウナギの漁獲がはるかに少ない:緑が密猟・密売が疑われる取引)
    シラスウナギの国内取引量内訳(申告・未申告)
  • 世界的にも日本的にも絶滅危惧種だから慎重になるべき。控えることのデメリットはないのだから、ウナギ食の文化を絶やさないためには控えるべき。
  • シラスウナギの量は年ごとの増減はあれど、年々減っているのは事実
  • 日本で食べられなくなれば中国や台湾でのシラスウナギ漁も減るはず
  • 原因が分からないのだから、絶滅の恐れがあるならできるだけ控えるべき

国内の漁獲量が減りつつあるのは事実ですが、供給量の大幅な減少はヨーロッパウナギの貿易規制による影響もあるため、必ずしもはっきりしていないところがあります。

専門家でも断言できない絶滅の危機

専門家でも「うなぎは確実に減っている」「絶滅する」とは断言できていません。

中央大学の海部健三先生の「うなぎレポート」には以下のように書かれています。

ニホンウナギの数が現在、増えているのか減っているのか、専門家の中でも意見が分かれています。現時点では、ニホンウナギの増減について論じた学術論文は一つしか存在せず、その論文では1990年代以降ニホンウナギは増加している、と報告しています*1。しかし、ニホンウナギは現在も減少していると考えている専門家は、決して少なくありません。また、ニホンウナギを漁獲している漁業者の方々からも、「減少している」という声が多く聞かれます。

3 – ニホンウナギは絶滅するのか of ウナギレポート

魚類の個体数の推計に用いられる「単位努力量あたりの漁獲量(CPUE: Catch Per Unit of Effort)」に必要となる「漁獲努力量(漁業者数や出漁日数など)」といった情報が存在しないため不足しているため、推定のしようがないというのがその理由。

MEMO
CPUEのデータは存在するとのご指摘をいただきました。「十分なデータがそんざいしない」すべきでした。ご指摘ありがとうございました。

ニホンウナギに関して入手可能なデータは、おもに漁獲量のみであり、漁獲努力量に関する情報が不足しています。このため、ニホンウナギが増えているのか、減っているのか、減っているとすればどの程度減少しているのか、把握することが難しいのが現状です。

「ニホンウナギの個体数は、1970年代と比較して大きく減少していると考えられています」としながらも、

  • ニホンウナギの数が現在、増えているのか減っているのか、専門家の中でも意見が分かれている
  • うなぎの個体数を推定するためのデータが不足している
  • (密漁が横行しているために)シラスウナギ採捕量のデータの信頼性は低い
  • ウナギの放流により、天然のうなぎと養殖で育ったうなぎが混在するため把握が難しい

と、うなぎが減っているとは断言できない理由を列挙しています。

その上で、うなぎの数は減っているだろうと結論づけていることになります。

その程度を定量的に示すことは現在のところ困難ですが、少なくとも、1970年代ごろと比較した場合、ニホンウナギは減少していると言えます。

専門家の腰が定まらない理由

  1. 「増えているか減っているかは専門家でも意見が分かれている」
  2. 「減少していると言えます」

1と2は矛盾しています。1が正しいのなら「減少しているかもしれないし、そうでないかもしれない」としか言えません。結論めいたことを書くならば、「私は減少していると考えています」としかいいようがないはず。

これではよく言って腰が定まらない。悪く言えば逃げの発言です。

データに基づかない推定は「私はこう思う」という私的発言にすぎません。研究者が根拠に基づかない発言をすれば、研究そのものの信頼性を疑われてしまう可能性があります。

研究者が「おそらく減っているだろう」と考えていても、断言ができないのはこういった事情によります。

'20/7/20補足
天然のニホンウナギの遡上個体の減少を特定した論文が公表されています。

岡山県の淡水域に生息する天然のニホンウナギは極めて少なく、しかも、天然遡上個体が多く存在する沿岸域の個体数密度指数も減少しています。全体的にみると、岡山県に生息する天然遡上のニホンウナギは、著しく減少したと結論づけられます。

専門家でも分からないのだから、ふつうの人には判断しようがない

専門家でも分からないのだから、普通の人にはニホンウナギが減っているのか増えているのか分かるわけがありません。

  • ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)も環境庁もレッドリストに掲載している
  • うなぎ漁獲量は減っている
  • うなぎは減っていると考える専門家が多い

はっきりしているのはこの3つ。

うなぎ資源を大事にしたいならウナギは減っている説を重視して資源保護のために食べるのを控える。

そうでなければウナギが減りつつあることを念頭に置いて、おいしくいただく。

これでいいんじゃないでしょうか。

2 Comments

Ichiro Kanto

ニホンウナギのCPUEに関するデータが無いため,資源が増えているか減っているか分からないというのは間違っていると思います.実際,当方の論文「水産海洋研究80(3)214-221, 2016」Figure 7に高知県におけるシラスウナギCPUE推移を掲載し,明白な資源の減少傾向を示しています.

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テン

Ichiro Kantoさん

ご指摘ありがとうございました。「十分な」をつけ忘れていました。間違いのないよう、海部先生のウナギレポートにある「情報が不足している」に変更しました。

ご指摘ありがとうございました。

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